短歌 2020

君もさあ そんなところで見てないで 雪の真似して降りておいでよ

曖昧に 掴んでどこかに 消えるのは 得意技だね いや褒めてるの

文字のなかに君はいるけど永遠に触れないの何のお仕置き

あと五分 君に頼んだことはいま機械がしてる 話したいんだ

(2020/2/18)

帰りたくないというのは居る場所があるひとの言う台詞みたいで

満月を見付けて祈る癖のある きみはいつかの月の住人

猫だけの夜半の集いに参加して 化け猫になる方法を訊く

(2020/4/6)

あのひとのかなしみはきっと不知火 甘い実になり落果の予定

かなしみは常緑樹 よろこびは落葉樹 笑うきみは森

目が覚めて背泳ぎで寝る 塩素臭 沈みゆく視野 ゴーグルに水

生きているヤツは擦ると開くとか 噂する貝 潮騒のなか

(2020/5/3)


(小学生)

ぼくは1には足りなくて きみが言う 1+1は2 にはなれない

(中高生)

きみがすぐ 水を欲する 夏のターン 渇かすぼくと 潤すプール

制服の きみを知らない 劣等感 学ランはすぐ 捨てたってのに

きみがいま なんにも持っていなくても 好きだからさぁ生きててくれる?

(男子妄想短歌 2020/5/26)


店外の 貼り紙みたいに はじめてよ 冷やし中華 それと夏バテ

吹かしたら ニュートラルで ギア変えるよな 意味ないことで 笑ってる今

アカウント 持たない先に きみが居て 近付きたくて 捨てきったぼく

きみに告ぐ いつかわたしが 死んだとて 布団に入り 早く寝てくれ

(2020/6/1)

猫が死す 漫画を読みて 愛猫を 抱き泣くぼく 蹴り逃げる猫

カメ2匹 名付けたのなら 太陽に 甲羅を干すよ 朝日と夕日

きみは今 サナギになって いるのかい 繭の中って 居心地はどう?

期待してないと言ったら嘘つきか 何になっても いいから待つよ

(2020/10/10)