映画 「セッション」

 久々に映画の話を。この映画はとても良い映画だと思うんですが、パワハラなどの被害にあったことのある方にはおすすめできません。まずは、予告編をどうぞ。

https://youtu.be/mZjUEIV2Ru4

 予告編を観て、こういう人が出てくるのムリ、と思ったあなた、かなり出てくるんで止めておきましょう。ダサめの主人公が気になるあなた、最後まで観ましょうか。鬼教師がめちゃくちゃ面白いと思ったあなた、大丈夫ですか? (適当)

 この映画についてはたくさん語られていると思うので、個人的に思うことを書こう。まず、芸術とはなにをもって芸術なのか。わたしは単純に、その人がそう感じたら芸術だと思う、単細胞なので。一方、プロであるとか、それだけで食って生きていく、となると、誰かしらその界隈で権威のある人の評価によって、表彰されたり推薦されたりすることが大きな基準になると思う。基礎はあれど、選ぶ人の思考や哲学やセンスによるところで落とされることもあるだろう。そういった芸術の矛盾をはらんだところに焦点を当てたのが、この映画だと思う。

 指揮者が最高の権力を持つ音楽学校の一室。指導者として産み出す音楽は評価されており、そこでは、彼の言うことが全て正しいとされる。そこに何とか加わり音楽家としての夢を掴もうとする若者たちは、次第に軍隊のような厳格さを持ちはじめ、それは教師を鬼軍曹に変えていく。

 この教師役の方 (J・K・シモンズ) がアカデミー賞とりましたけど、映画やドラマであちこちお見掛けしておりましたが、こんな役がハマるんだ、とちょっと驚いたし、こんな筋肉あったっけ、とも思ったし、こんなお洒落ハゲだったっけ (混乱) というジャズ狂の姿を見せてくれました、マジでスタンダップして拍手。

 この映画はもともとショートフィルムからはじまったそうで (DVDの特典に映像が入ってたと思う) 。脚本だけでは資金が集まらず、ショートフィルムを作って映画祭に出したら評価され、一本の映画を作れることになったという。その過程を知り、一度は評価されなかったとしても、作ったものが良いと思ったのなら、もっといろんな人に見てもらえるよう行動するのは大事なことだと教えてもらった気がする。

 そして映画では、ネタバレしますが、ファッキンな指導者にとことん試され追い付こうとし続けた主人公は、壊れていき、指導者には見放され、大好きだった音楽を手放そうとする。ジャズの映画だったよね? と確認したくなるほどスリリングで目が離せない。

 しかし、バッドエンドにしないのがこの映画の好きなところで、最後まで観てもらいたい。主人公が、自分の価値を他人にではなく、また自分の手に取り戻す場面。何度観ても爽快で、だから音楽は聴いてて楽しく、人のこころを掴むし揺さぶるんだなと改めて思う。そんなジャズに狂った映画は、編集までもリズムにのっているようで、カットが心地よい。ぜひ視覚でも味わってもらいたい。ちなみにわたしとジャズは、吹奏楽部で演奏してジャズいいなと思い、ビル・エヴァンスかっけーとCDジャケ買いしてまだ良さが分からず、リッキー・リー・ジョーンズかっこいいけどこれジャズ? となり、ノラ・ジョーンズ落ち着くし良いよね、で落ち着いている。

終わり