猫のダイエット

 うちの猫は今年で六歳になる。県の動物保護施設からもらってきた、元ノラ猫だったが、網戸の開け閉めの音にもビビるような、立派な家猫になった。時折、毛繕いの途中で撫でてやると、わたしの手も一緒に舐めてくれる。おそらくは、自分と言葉も通じないし、やたらと背が高く毛は薄いけれど、同じ生きものだと思ってくれている気がする。

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 子どもとわたしが弱っていた間。猫と遊んであげる時間がかなり減っていたが、食べる量は変わらずあげていた。=猫、なんか太った…?

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 体重は大きな変化はないものの、抱いた感触がもにゅっとしていて、皮下脂肪が増えた感じがする。この子をもらってきた動物保護施設に行く機会があり、獣医さんにお会いしたので、写真を見てもらうと「あぁ~太ってますね」とはっきり。「どうすればいいですか?」と尋ねると、「遊びながら運動させてあげて、エサはダイエットフードに変えてみるといいと思いますよ」とアドバイスをもらった。人間と同じように、猫だって太るのは健康に良くないが、猫にそれは分からないだろうし、太ってもかわいいから、厄介だ。幸い、猫と遊ぶ元気は出てきたところだったので、猫のダイエット計画を約二ヵ月前から開始した。

 まず、今まで何となくあげていたカリカリ。体重に合った量を計り、紙コップに印をつけて、一回の定量を朝と夜の二回だけあげるように決めた。求められても追加はしないし、余っていれば少し減らすようにした。
「明け方にエサが終わると猫に起こされるんです」と先述の獣医さんに話したら、「エサをあげる時間を遅くするといいですよ」と教わったので、夜は七時ごろと決めた。すると、起こされることはほとんどなくなった。新しいエサを買うときは、カロリーを比較して、低いカロリーのものを選んだ。

 あとは、狭いアパート内ではどうしても運動不足になるので、動くように遊ぶこと。子どもが家にあったリボンを巻いて、小さなボールのおもちゃを作った。それを猫が気に入り、指で弾くと追いかけていく。なるべく毎日遊ぶことにする。

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 はじめた頃は、二回ほどボールを追いかけただけで、ふーふーと荒い息をして横たわっていた猫…。そういえば、最近はキャットタワーから転がり落ちたこともあった。着地が危うくて、ヒヤリとしたことを思い出す。こんなにも運動不足になっていたのかと、わたしたちの危機感が高まった。それから遊び続けるうちに、猫はだんだんと体力と俊敏さを取り戻して、疲れて横になるまでの時間も長くなった。それに、猫は遊んでもらえることがとてもうれしいらしい。ボールを上手く捕まえると、子どものところへ撫でてもらいにいく。この部屋で暮らす猫には、遊ぶのも大事な運動なのに、サボっていてごめんね、と気付かされた。
 やる気を出した猫は、サッカー選手のようにボールを前足でドリブルしたり、キーパーさながらのボールキャッチを見せるときもある。猫の身体能力ってすごい、と感心するほど動けるようになった。

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 そうして二ヵ月が過ぎ、猫がやせてきたことが、抱いた感触や身のこなしの軽やかさで分かるようになった。筋肉も付いた気がする。日々、適量を食べて運動することで、猫はやせるのだと分かった。でもこれって、人間も同じだよな、と思う。そこで我に返り、運動不足の自分の身体も少しは鍛えようと、YouTubeをおもむろに開いて、ヨガのストレッチなどはじめる人間を、猫は不思議そうに眺めている。

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終わり