読書「夜明けのすべて」
「姉ちゃん、喋らなきゃ3才は若く見えるよ」
妹の言である。…………………………無理だ。3才差の若さよりも、喋りたいことがあるんだ。でも、そんなに自由に喋れる場所がないから、こうしてブログに書いているんだよ…? (前説)。
ブログのabout欄に、推し本を載せた。二冊あるが、一冊紹介したい。なるべくネタバレなしの範囲で。(※新しく変えました)
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『夜明けのすべて』(著/瀬尾まいこ) 水鈴社
瀬尾さんの小説は、日常に含まれる不条理や理不尽さとともに、人間の面白味と優しさがそれを半分にするくらい描かれており (某痛み止めのコピーみたい…)、安心して手に取れる作品が多いと思う。好きな作家。
まず、書き下ろしを出版した、水鈴社が気になった (そこ)。見たことない名前だな、と検索すると、記事がヒット。文藝春秋から独立した編集者が作った、新しい出版社だそう…。(興味のある方、以下参照どうぞ)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80881?page=1&imp=0
物語には、主人公が二人登場する。一人は、藤沢美紗。長年PMS (月経前症候群)に悩まされており、月に一度、どうしようもなくイライラが爆発する日があり、コントロールができない。
もう一人は、その藤沢が働いている会社に転職してきた山添。彼はパニック障害を患っている。それが原因で辞めた前職にも、今の職場にもクローズにしたまま働いている。
互いにコントロールできないものを抱えながら、少しずつ周囲にオープンにして生きてきた藤沢と、家族にもクローズにしたまま人生に希望を見いだせず、自信や生きがいを失っている山添。
互いのコントロールできないものをある出来事から知ることになり、それを学ぶことで視点が開けていく…。
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この本には、二つの病が出てくるけれど、それゆえの症状や生活の生きづらさが、詳しく描かれている。
PMSの現れ方はさまざまだと思うけれど、今回はイライラが抑えられない、という点が主人公の症状。この二つの病が、物語の流れをむやみに加速させることも、減速させることもなく、緩やかに日常に馴染んでいることが、すごいなぁと思った。そして、分かり合えないし、恋愛的に好きにもならないだろう相手は、ときに救いのような存在になりえるのかもしれない、という描き方に、瀬尾さんの作品への希望の置き方を好きだなぁと思う。最後に、表紙のイラストが個人的にとても好みだし、『ボヘミアン・ラプソディ』は名曲であり名画。
読了
(今になって、著者のメッセージを読み、泣いてしまった。わたしは、本書を読んでから見るのをお勧めします。以下)
https://www.suirinsha.co.jp/books/detail1.html